「戦い、信仰、そして近代戦」by ヴラディミア&コンスタンチン

April 19, 2011 by Vladimir Vasiliev and Konstantin  
戦い、信仰、そして近代戦 ヴラディミア・ヴァシリエフとコンスタンチン・コマノフへのインタビュー
数カ月前にアリゾナのフェニックスでシステマセミナーが開催された際、ICSAの創始者ブランドン・サマーフェルドと彼のシニアインストラクターであるクワン・リーが二人のシステママスター、ヴラディミア・ヴァシリエフとコンスタンチン・コマノフにインタビューをする、というまたとない機会を得た。ブランドンとクワンはこの素晴らしい戦いのマスターたちとセミナーの合間に情報交換し、マスターたちは信仰やファイティングスピリット、そして変わりゆく近代格闘についてまで幅広く話をしてくれました。以下楽しんでください。

ブランドン(以下、B):インタビューを引き受けてくださったことに感謝します。とても楽しみにしていました。
ヴラディミア(以下、VV)、コンスタンチン(以下、KK):光栄です。
B:10以上の質問がありますが、この質問から始めたいと思います。戦士にとっての一番の美徳とはなんですか?
VV:静けさ(Calmness)と信仰、その2つの結びつきです。もしあなたが信じていれば、あなたはカームでいられるでしょう。さもなければ、焦りでいっぱいになってしまうはずです。
B:なるほど。では、戦士にとって最も重要なスキルや資質はなんだと思いますか?
VV:もしあなたがスピリットを持っていれば、スキルは自ずとついて来るでしょう。技術にばかり気を取られてはいけません。そうなってしまうと、技術は空虚で不完全で、生産的でも現実的でもないものになってしまいます。ですがもしあなたが本当に本質とスピリットを備えているなら、技術は自ずと出来上がるものです。
KK:なぜやっているのか、何をやっているのか、何のためにやっているのかを知ることを、付け加えたいと思います。根底にある原理を理解しなくてはいけません。本当のスキルとは、自分自身を理解することです。そうすれば、明らかになります。
VV:それはとても困難です。なぜなら戦士は考えすぎてもいけません。ただ必要なことをやるのみです。
KK:思考は一側面に過ぎません。自分を理解することとは全く異なります。
VV:その通り。戦士にとって必要なのは、ミッションを理解し、遂行して、生還するのに必要なだけのスキルです。ただそれだけです。国を守り、生き延びるのです。
B:過去と現代における軍隊の戦い方について、何か違いに気づくことがあれば、教えてください。
KK:以前は戦士と戦士が協力して共に闘っていました。ですが、いまはお互いに離れているので、困難になっています。かつて、人々はいまよりも母国を愛していました。お金のためだけには闘えません。理念のためのみに闘うのです。もしお金のためだけなら、あなたは最後までいくことを望みません。死ぬことなど望んでいないでしょう。(そもそも、そうやってあなたが稼いだお金を誰が喜んで使うでしょうか?)
KK:しかし、これもまた技術の進化によって変わってしまいました。かつては顔と顔を突き合わせていましたが、いまは離れてしまっています。あなたが射撃しても、本当に人を見ることはありません。昔は仲間の戦士たちに何らかの規律の乱れがあった場合、それは戦闘を通じてすぐに露見しました。現代はテクノロジーによって、乱れがあったとしてもより長く生きることができます。
B:あなたはもともと戦いの技術が好きだったのですか? それとも、ただ単純に任務のためだったのですか?
KK:私は子供の頃から好きでした。
VV:私は人生を通じて好んでます。まったくもって天職です。
B:軍隊格闘術と一般市民の武術のもっとも大きな違いはなんだと思いますか?
VV:比較することなどできません。お互いに隣り合っていないのですから。
KK:軍隊武術においては、最短の時間で、最も少ない手間で、目的を達成しなくてはいけませんが、一般市民の技術においては全ての過程が含まれます。とても長い時間が必要です。
VV:軍隊では、殺すことを学びます。全てのアイディアは殺すためのものです。“戦う”ためではありません。これが違いです。特殊部隊ではさらにそれを学びます。特殊部隊の人々もまた、ボクシングやグラップリング、グラウンド・ファイティングなどのバックグラウンドをもち、それらを用います。ですが、戦士にとって“戦う”という発想は間違っています。戦うことなどできません。不可能です。もし彼が“戦う”なら、準備が出来ていないことを意味します。準備が出来ていないのは、生き延びることができないことを意味します。
KK:たまにスペツナズでは両方を用います。使える技術の幅を拡げるためです。例えば、敵を生け捕りにして何らかの特別な仕事をする時などがあります。
クワン・リー(以下、KL):特に徒手格闘において、兵士や隊員はどの時点で自分なりの戦い方を見出すのですか?
KK:必要に応じます。まず、なぜあなたが軍を必要としているのか、という問いに向かわねばなりません。故郷を守るためではありません。若者を成熟させるために軍は必要とされます。子供時代を終わらせ、成長させるのです。このことを理解しなくてはいけません。さもないとあなたは軍事教練の目的を勘違いしてしまうでしょう。徒手格闘が問題を解決するわけではありません。人をより人間らしくするのに必要なのです。ただの「男性」が「男」になるようなものです。それは単に誰かを傷めつけることよりも、より総合的で完全な挑戦です。
KL:理想を言えば、初めのうちから自分自身を向上させ、発展させていくべきです。 ですが私は低いレベルの兵士を教え込む格闘術を考えていました。以前あなたが言ったように、基本や動きをより高いレベルへと高めていくのが必要となる、ある明確なポイントがあるのです。
KK:ロシアにおいて、軍の組織を作る方法はそれ自体それほど重要ではありません。より大切なのは人々を向上させることです。軍は、男性をより“りりしく”させるトレーニングに向かわせるための口実に過ぎません。もちろん、故郷を守れるようになるため多くの事を学びます。しかしそれは二次的なものです。男は成熟することによってのみ、自分のやり方と技術を見出すことができるのです。
B:戦士にとって、“信仰”はどれほど重要なのでしょう?
VV:それは全ての基本です。
KK:何かに挑まねばならないとき、信仰しなくてはいけません。信仰にはさまざまなレベルがあります。中でも最高のものは神への信仰です。その次に国、おそらくその次にはあなたの司令官がくるかもしれません。人によって異なりますが、何かを信じていなくてはいけないのです。
VV:信仰は全ての源です。しかし時々、見失ってしまいます。ご存知の通り、社会主義時代のロシアにおいて人々はそれを失っていました。しかし公には信仰を認めていない人々もまた、接点を保っていました。彼らは依然として繋がり続けていたのです。なぜなら祖国や愛する者のために死ぬ準備ができていたからです。それは近いのです。神と繋がっているのです。
B:私は「塹壕には無神論者はいない」ということわざが好きです。ご存知の通り、これは真実です。私自身、実際に自分の中や他人の中にに見出すことができます。今にも戦争に行こうとする時、彼らは毎日祈り始めました。私もそうでした。すぐに、毎日、祈りました。
さて、次の質問です。コンバットサンボなどの他の格闘技と比べて、システマの独自性はどこにありますか?
KK:他のあらゆる格闘技には、明確な目標があります。何かの試合で勝ったり、あるレベルに達したり、技を身につけたりすることを目指します。ですがシステマはとても広大です。システマから他のあらゆる格闘技に移行することができます。丘の上に立っているようなもので、どんな方向にでも降りていくことができるのです。ですがこれはあくまでも、“下っていく”プロセスであることに注意しなくてはいけません。
VV:これは時にシステマを理解し、受け取ろうとする人々にとって難しいことであるようです。なぜならまず第一に自分自身に向かい合わなくてはならないからです。人々は得てしてこれが好きではありません。自分の怠惰やプライドなどに向かい合うことを意味するからです。
KK:第一に、システマでは自分に勝たなくてはいけません。自分自身を乗り越えて初めて、他者と戦うことができるのです。
B:システマでは、正しい呼吸がかなり強調されています。なぜそれほど大切なのでしょうか?
KK:体の内部で起こっていることは、他の何ものによってもコントロールできないからです。意識して内臓をコントロールすることなどできません。呼吸の他に無意識の領域や神経系への鍵となるものはないのです。もしあなたが神経をコントロールできないなら、効率よく動くこともできません。
B:私からの最後の質問です。これからのシステマはどこに向かっていくのでしょう?
VV:いま、もっと多くの人にトレーニングの機会を提供できるよう、新しいウェブサイトを作り、本部のジムを移転しました。より広い意味において、強い人々こそシステマを学ぶべきです。残念ながらそういった人はそれほど多くありません。弱い人々はシステマのほんの一部だけを手にします。もし強い人が全体を掴むなら、それは理想的です。
KK:私たちはシステマの理想がどこにあるべきか、どのように現実になっていくのか話すことができます。システマはあらゆる運動の背後にある原理となりますし、そういったところを見たいと思います。またシステマは若者に対して、巨大なポテンシャルを与えます。特に困難に立ち向かうチャレンジングな若者に対してです。私はこういった人々とともに長らく行動しています。さらにシステマは一般人を日々のストレスから助ける上でも、巨大なポテンシャルを秘めています。本当にシステマは、日々の生活において人々が直面する全ての困難に対して、応えることができます。なぜならそれは、人に静けさ(Calm)をもたらし、思考をクリアにし、視野を明るくすることができます。でも、挑まねばならないことがあります。先程のヴラディミアの強い人々についての発言に戻りますが、誰もが犠牲を受け入れて自分自身を高められるわけではありません。システマを自分のものにするうえで、これは重大です。私たちは理想を持ち、現実に向かわなくてはいけません。
B,KL:素晴らしい答えに深く感謝します。
VV、KK:質問が素晴らしかったのです。ありがとう。

著者について ブランドン・サマーフィールド(Brandon Sommerfeld):ヴラディミア・ヴァシリエフより公式インストラクターに認可。2002年よりヴラディミアおよびミカエル・リャブコにシステマを学び、ヴァージニア州西部にある自身のロシアン・マーシャル・アーツのスクールにて指導している。
クワン・リー(Kwan Lee):ヴラディミア・ヴァシリエフとミカエル・リャブコが育てた、もっとも経験豊かなインストラクターの一人。軍における航空工学のエンジニアでもある。ワシントンのシアトルに住み、専門家だけでなく、一般人向けのセミナーやクラスを実施している。
Vladimir Vasiliev and Konstantin